「ふれあい農園」は大垣市都市計画部都市施設課が管理をする農園。経済部農林課が担当する「市民農園(市民菜園と高齢者健康農園)」とは違う。南一色町の河川敷はかつて民有地で田畑があり、昭和30〜40年ごろまでは農村風景が残っていた。このため、大垣市は民有地を順次買収し、都市の中の公園に原風景を残した「ふれあい農園」や池、雑木、駐車場を備えた南一色公園を2007年度から4年計画で整備した。完成前年度の09年度から農園は整備が済んだところから市民に順次貸し出している。現在は20〜49平方メートルの畑121区画があり、子育て中の若い人から80歳を過ぎた年配者まで幅広く利用している。
開園当初からふれあい農園を利用している安保さん。「僕たちが畑を借りた時は、石ころがいっぱいで、石を掘り出すことから始まった。スコップや鍬では無理でツルハシで石を掘り出した人もいる。3年くらいは土づくりの期間でした」と当時を振り返る。さらに、河川敷の中の農園だけに、杭瀬川の上流で大雨が降ったり台風がくれば杭瀬川の水位が上がり農園は水没する。1年に2回も水没したこともある。粘土質の土で雨が降り乾燥すると、カチカチの土になり、畑を耕すのも大変。利用者の中には「畑が水没した後は、野菜も泥水につかりもう嫌。畑を返そうと思ったことが何度もあります」と語る人もいる。それでも多くの人が耕作を続けているのには、ふれあい農園には何かの魅力があるからかも。
その一つが利用者の絆か。安保さんや世話役の後藤智さん=大垣市木戸町=たちが企画立案して有志に呼びかけてランチ会は4年前から開催。昨年7月には23人がマイクロバスで福井県若狭湾まで海の幸を食べに出かけた。今年10月には、農園利用者の中に山形県の人がいたことから、その人に教えてもらい、20人が参加して芋煮会も近くの公園で開いた。芋煮は後藤さんたちに作ってもらったが、参加者も家庭料理や漬物などを持ち寄った。このほか、農作業の合間にコーヒーを飲みながら触れ合っている人たちもいる。
「声を掛けるのはあいさつ。農園利用者の中には仕事や趣味を通じて知り合った人も多く雑談をしていると楽しい」と話す安保さん。「子供のころは畑仕事を良く手伝った。戦前や戦中は勉強するより手伝いが大切だった。でも、自分で育てた野菜の美味しさは格別。無農薬栽培で近くに住む長女の子供たちが中学生や高校生のころはカレーライスが好きなので、タマネギとジャガイモをたくさん作って届けた。ふれあい農園でみなさんに元気をもらっている。健康なうちは続けたい」と語る。
2014.12.01(子林 光和)