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聴く人に笑いと癒しを届ける医師で「大垣落語の会」会員、和田 育穂さん(66)


「一服亭善快」の高座名の和田さん
 今年2月7日、岐阜県大垣市の宇留生地区センターホール。会場からは笑い声が響き渡る。同市宇留生地区社会教育推進協議会主催の「第5回宇留生寄席」の会場だ。特設の高座から軽妙に語りかけたのは校区内で開業する医師の和田さんら「大垣落語の会」の会員4人。笑うことは健康に良いと言われることもあってか、会場は約160の落語ファンらで超満員。和田さんが高座に上がるとひときわ大きな拍手。和田さんは「落語は日常のたわいもない庶民の生活の中から生まれた噺(はなし)を題材に笑いを誘っている。多くの人に聴いていただいてうれしい。これからも続けていきたい」と、落語の魅力や決意を語る。


「宇留生寄席」で高座に上がる和田さん
=大垣市宇留生地区センター
 「大垣落語の会」は1990年後期の大垣市教育委員会主催の成人学校「落語やろう」講座の修了生が「このまま解散では寂しい」とOB会を結成したのが始まり。02年4月に正式にスタート。現在の会員は県職員や警察官、教師、会社員、主婦ら約20人。毎月2回例会を開き研鑽している。春と秋の年2回、会員が自慢の落語を公の場で披露する「すいと寄席」(今年は3月13日と10月16日)を開く一方、夏にはプロの落語家を招いた「落語を聴く会」(同8月21日)を開催している。会員たちは、依頼を受けて福祉施設や老人会、学校などを訪れてお年寄りや子どもたちに笑いを提供するほか、落語の面白さを教えている。和田さんも「宇留生寄席」や地元の集まりなどで時間をつくって高座に上がっている。


患者の声にしっかり耳を傾ける
診察の和田医院
 和田さんの高座名は「一服亭善快」。落語を聴くことが好きだった和田さんが2001年に同会に入会した際に、会員たちが「医療に思いやりと患者との良好な人間関係が求められる昨今。処方せんに笑いを一服盛り込み、病んだ人への癒しや全快への手助けになって欲しい」との思いを込めて名付けた。仕事が終わった後などに時間を見つけてはCDを聴く一方、CDから文字を起こして古典落語を仕込んでいるという和田さん。好きな落語は、大好きな落語家、故・十代目金原亭馬生が演じる「うどん屋」や「目黒のサンマ」「そば清」などとか。この日の「宇留生寄席」で和田さんが演じたのは、浅草雷門近くの長屋に住むそそっかしい兄弟同然に仲の良い男たちが登場する「粗忽長屋」。兄貴分の男が、行き倒れの遺体を弟分と間違えたことから始まる演目だ。落語が始まると、客席からは笑いのうず。和田さんは「落語は『間』が命と言われている。間とは言い換えれば呼吸。演者それぞれのテンポ、リズム、調子、抑揚、場面や人物の心理などによって微妙に変化する。大変なことだが極めていきたい。そのために時間を見つけて稽古をしていきたい」と意欲十分だ。


和田さんが制作した陶芸作品
 交友関係が広い和田さん。落語のほか陶芸や写真でも活動している。陶芸は岐阜県立大垣北高校時代の同級生で瑞穂市在住の陶芸家から指導を受けている。2010年からは同級生を中心に結成した「陶喰(とうく)会」の仲間たちと約1年半ごとに作品展を開いている。今年も自由な発想で作ったオブジェや日常食器などの作品展を5月27〜29日に大垣市船町の「奥の細道むすびの地記念館」で開く。写真は大垣市医師会や市民病院の医師や事務局員らで「光遊同好会」を2002年に結成。会員たちは長野県や滋賀県、三重県などに車を走らせて「自然の美しさと偉大さ」をカメラに収めている。今年の作品展は6月10〜12日に大垣市室本町の市スイトピアセンター・文化会館で開く予定。
2016.04.01(子林 光和)

今回の西美濃な人

和田 育穂(わだ いくほ)

 岐阜県大垣市荒尾玉池の内科・小児科「和田医院」院長。同市荒川町で開業していた祖父から数えて3代目。昭和大学医学部を卒業後、同大附属病院などで研修医や勤務医を経て、1989年から父親の後を継いで院長。父親から「患者との信頼を大切にしろ」と常に教えられたと言い、相手の立場に立ち、患者の声にしっかりと耳を傾けた診察に心がけている。好きな言葉は「看脚下」(常に自身の足もとを見よ)。大垣市医師会理事や同医師会准看護学校の運営委員など要職を務める。妻と母親との3人暮らし


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