「森の仲間たち」の設立は2013年12月。兼務する「NPO法人地域再生機構」(岐阜県恵那市)の仕事の関係で、間伐材を地域通貨で買い取る「木の駅上石津」や、薪ボイラーを使った「かみいしづ温泉湯葉の湯」の社会実験に携わってきた森さんが「地域の多くの人と交流してお世話になった。地域の人に恩返しを」と立ち上げた。事務所は、上石津町時商店街にある旧郵便局舎を改装してオープンさせた。森さんは「私の親戚が上石津町に嫁いだことから、上石津には子どものころから良く来ており、なじみが深い土地」と語る。
設立までには失敗や苦労もあった。そんな森さんを支えたのは「地域と森を元気にしたい」との想いを持つ全国の仲間。「当たり前のように薪ストーブを運用している欧州の情報を集め、カンパをしていただいた人に伝える」という「森の仲間たち プロジェクト」に賛同した人たちだ。300人以上の仲間がカンパして森さんを薪ボイラーの先進地・欧州に送り出した。森さんは2013年1月20日から2月8日までの間、ドイツ、スイス、オーストリアの薪ボイラー使用現場、薪ボイラーメーカー、薪製造現場などや薪ボイラーが成り立つ背景にある森づくりやむらづくりの現場などを視察してきた。そして同年末に欧州から薪ボイラーを輸入して販売する会社を立ち上げた。「森の仲間たち」には東京都や千葉県、京都府から移住してきた社員や森さんの考えに賛同する地域のパート従業員がいる。
実証実験は昨年11月から実施。上石津地域事務所敷地内の倉庫に薪ボイラーと5000リットルの水が入る蓄熱タンク2台を設置して始まった。間伐材を燃やして暖めた湯をパイプを通じて事務所内を循環する仕組み。実験では長時間利用による熱効率を検証した。
間伐による森の再生とともに、将来的には雇用の創出にもつなげていきたい、と考える森さん。現在も機器の運搬や加工などを地域の業者に委託するなど、地域貢献に努めている。さらに「薪ボイラーの需要はこれからも増えてくる。福祉施設や宿泊施設、ゴルフ場などに薪ボイラーを活用するように働きかけていきたい。将来的には、薪ボイラーメーカーを目指したい。欧州の暖房用の薪ボイラーでなく、日本のお風呂にあう薪ボイラーを開発したい」と大きな夢を持つ。「上石津町は自然が豊かで、住んでいる人たちも良く、安心感がある。落ち着く。高速道路のインターや新幹線の駅にも近い」と上石津町の魅力を語る森さん。新しいものに次々と挑戦する森さんや「森の仲間たち」の活躍を期待したい。
「西美濃な人」は70回を区切りに今回で終了します。約6年間、取材のために西美濃の各地を訪ねて多くの人と出会うことができました。輝いている人たちにお会いできたのは記者冥利でした。本当にありがとうございました。拙い文章を長年読んでいただいた皆さまがいたから続けられました。感謝しております。
2019.05.01(子林 光和)